ビクトリア🌼ナーチ5

⑤出発したよ~続


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オペレーションルームでは航行空域を確認しながら、どこのサービス ステーションに停まるか、一般のシップが多く立ち寄る人気のプラットはどこか?話題のランチメニューを見ながら楽しく進行中 …。


「人気エリアは、やっぱり混みますねぇ💦」

「そうなのね~」

ラディアとミレイユはプラットの空き状況を比較しながらエアモニターをスライドしている。


隣でエップは ガオウから渡されたD-pタブレットに向かって、ひとり ぶつぶつ言う。


「あのねぇ~、せっかくのおでかけだからぁ!新しい服、着てこようと思ったけどぉ、やっぱり こっちにしちゃった!それに、前髪も切ったんだけどぉ、なーーんか、変になっちゃったぁ~ん」


「どーせ、どうなってたって変なんだから! それ!ミラーにするのやめなさいよね」

スズカはエップからタブレットを取り上げた。


「やぁーん、ケチぃ~!今日 来れなかった みんなに見せてあげようと思ってぇ~お話ししてたのにぃ~」


今日 来れなかった皆、とは、常勤のタニアやドグ、RWS研究室のリパーダやミヨシ、そして情報局のオブジェたちのことだ。


「お前の前髪なんか見たって面白くもなんともないわ!!

それにマコトたちはプリスタインだし、連絡もつかない。

近頃スパイ・ウェアの仕事ばっかりで、ブラッセルの人間だか、ロットの人間だか、わかりゃしないわよ!(*`Д')」


もちろん、どちらでもない地球人。


スズカは、会えなくて寂しいとは素直に言えないタイプ。

気の毒だが、お互いの仕事が忙しく、すれ違いが続いて破局するカップルの典型的パティーン だろう。


「スズカたちはぁ~、ロットでもブラッセルでも好きな方 いけるんだからぁ~、いいんじゃなぁい。」

今度は本物の鏡で、髪やまつ毛、ウブ毛のチェックやら なにやら…やっている。


「なに呑気なこといってるのよ、フォリナ(異星人)っていうのは、自分達の居場所、立場や役割を確立させて、住民権を得られるようにしておかないと、レフュージ(難民)扱いで、人権なんか無視されて、どっかの訳のわからない星で一生を終わることになるかもしれないのよ…簡単じゃないんだからね、恐ろしすぎるわ!」


「そぉなの~?」


深刻な表情で語るスズカに、エップのほうは、自分で振っておきながら 適当な返事だけで 全然 聞いていない様子。


「…そう、それを、大々的に推し進めているのはレオン…。この残忍な司令官は各フロアを覗き見して、何が楽しいんだか?…さすが趣味も最悪だ。」

クレインがどんな顔で そんな言葉を発しているか、レオンには見なくても分かる…


「単なるパトロールセイバーのチェックよ」


レオンはやれやれと小さな吐息を漏らし、監視モニターを分離、トップ スクリーンに美しい海の風景を映し出す。


クレインを柔らかい眼差しにさせたくて…


「まあ!きれい!」

「やばーい💕ステキじゃなぁ~い」

「本当、美しいですぅ」

しかし、それに答えたのはミレイユたちだ。


「この画像はナーチのパールビーチ、これから私たちが行くところよ!」

スズカが得意気に説明すると、

きゃーーーん!( ☆∀☆)とまたもや歓喜の声が。


「ふん。」

そんなことで騙されないわ!とムスッとしているクレインにレオンは平静を装い振り返る。


「…。どのみち私がやらなくとも誰かが手掛けるプロジェクトよ。今回のように観光やレジャーで成功している所に地域包括調査として向かう場合もあれば、アルファg(開発途上、重債務貧困惑星など)に対して環境、地層、生態など、各方面からの調査だけでなくて、そこに暮らす生物の社会階層状況を活量的に指標し変革、活性化する。1053プロジェクトは多くの人々が安心して暮らせる地域作りを担う重要な役目も果たしているわ、しかもチート(処分)であっても 政策理念に従い改修されれば、その星での生活は完全に保証される。まさに救済支援でしょう。」ニッコリ


レオンの 万人を感銘させる弁舌も、とろかす魔法の頬笑みも、クレインにとっては、更に不機嫌になるだけの無用の長物だった。

代わりにスズカが興奮して声をあげる。


「ええ!そうよ!レオンほど慈悲深く寛大な高官はいないわ!

弱く、貧しい者たちに手を差し伸べ、希望の光を与え、闇と腐敗のつまった悪しき囲いを打ち砕き、豊かで美しい世界、ユートピアを創造する偉大な指導者なのよ!」


スズカは幼い頃から、同盟の総事官 不動幽褄飛を狂信していたが、こっちに来てからはレオン・セシールに魂を捧げ従事している。

もはや崇拝しているといっても過言ではないだろう。


「うふふ  」

レオンは満足そうにうなずく。


キラキラとレオンを包み込む、薄紅色のベールは加算発光で明るく華やかに彩ろう。


「はぁ…」

クレインはただ呆れるしかなかった。

⑥ロングハマー

「みなさーん、ロングハマーに着きました!次のSSの立ち寄り時間がありますので、一時間ぐらいで艦《ふね》に戻ってきてくださいね!」

ラディアの軽やかな艦内アナウンスが流れている。


「ここにある高短《こうたん》団子ってすごく美味しいらしいわ~よ~」

「オオパク麺も有名なんですって!」

「なんと言ってもハマーパスタ!オススメよ!」

「あぁ!そうね!その映像みたわ!!オオパクのふっくら煮も人気なのよね!」

エップにスズカ、ミレイユに続いてユキホ。

「どれも旨そう!オレ、全部食べる

(*´∇`*)」

喋りながら、ぞろぞろと降りて行く。


ルフィーたちは、プラットのゲートウェイで早速 一服タイム。

「あのさぁ、売店でなんかさぁ、買えとかって?あれ、どういう意味だい?」


ラディアの艦内アナウンスで、

「あ、それと、みなさん、ちゃんとSHOP99で商品を1つ、購入して、笑顔で撮影お願いしますね!」

と続いたところだ。


「ひゃはーーい!酒買おうぜ!」

スキャルバは酒が飲めればいいらしい。ハチは面倒くさそうに、

「じゃあんた、ついでに なんか、あたいの分も買ってきなよ!」


「ダメですよ~、 自分で行かないと、カウントされませんからねぇ」

高短団子を両手にいっぱい持ったスプラが歩いてきた。


「おぅ!またてめーか!やんのか!」

噛みつくスキャルバに団子を差し出す。

「…💧(゜_゜;)」

渡されると、何となく それをみんなに配ってしまうアホなスキャルバ。


「今回、RTA産業振興協会やビクトリア観光グループがスポンサーになってますから、指定の販売店の宣伝や観光施設の紹介が優先的に旅の基準に組み込まれているんです!」


「ふっ…」

目を下げたままレイラは笑う。


「※EAが全面バックアップで調査費は困ってねぇはずだが…。さすが、レオンのやつ、ちゃっかりしてんな。」

ルフィーも笑う。

※護衛総局


「でも色々、お金がかかるみたいですよぉ~、スズカさんがボヤいてました、ちゃんと協力してあげてくださいねぇ~」

手を振りながら去っていくスプラ


「なんだ、あいつ…」

差し出された団子をムシャムシャ食べながら見送るルフィーたち。


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一方、まだ艦内のレオンとクレイン。メインブリッジで、なんだかんだやっているうちに取り残された二人…というか、気を利かせて皆 先に行ったのだろうが、それが仇となる場合もある。


「…私たちも行きましょうよ、クレイン。お店屋さんが色々あるのよ!」

沈黙が続いた気まずい空気を、打破するようにレオンは口を開くが、


「 …スズカたちは 丸め込めても、私はその手には乗らないわ。」

分厚い鋼鉄のベールで、自身を覆い隠すようなクレインの態度。


「 ねえ、そんな恐い顔しないで。」

レオンは目を細めて微笑む。


 クレインの奥底深くにある細かい闇の菌褶《きんそう》に触れたい…と

その鋼鉄のベールに手を伸ばす。


「やめて!あなたは何もわかっていない!!SJシミュレーションで、どんなに いい成績を収めても、現実はそんな統計だけじゃない!!割合だの確率だのって簡単に計算できるものばかりじゃないのよ!!しかも、それがすべて正しいなんて思い上がりも甚だしい!レオン、上に立つ者として、もっと理解していかなきゃいけないことがあるわ!」

いきり立つクレインを見て、まるで喜んでいる かのようなレオン。


「…そうなの?いいわ!聞くわよ、貴女が私と向き合ってくれるなんて…そう あることじゃないし、私はいつだって、貴女と沢山語り合いたいと思ってるのよ!」


「私は別に語り合いたい事なんてない!」

(むしろ、構わないでほしい。)


「…怒ってる?-w」

(もっと激しく来ていいのよ)

覗き込むようにクレインを見る、レオンの よくやる仕ぐさだ。


(憎たらしい顔、殴りたい…。)

クレインは心を落ち着けようと天井に目を向け、大きく息を吐いた。

「…私から言えることはただひとつよ、惑星も、その星に住む人々や、強制収容される人々の事も、もっと、ちゃんと考えて!あなたのおもちゃでもペットでもないんだから!」


いにしえの巫女クレインは、か細い腕で竜裂刀《サケベア》を振り下ろした!

キイイイイイイイイ~ー!!!

怪物レオンに立ち向かう。


だが、この怪物レオン!

軍神ダリオスの配下、アヒの180の軍団ですら、震え上がるという凶悪にして最強の悪魔だ!!

L&Pの軍旗と槍を構え、九頭竜に跨り、口から火を噴いた!


「 まさか-w 所有物なんて思ってないわ。だって大切な商品だもの-w

大丈夫!丁重に扱うわよ。」


「!!なにがっ 商品よ!やっぱりっそんな風にしか思ってない!💢」

カッとなったクレインが咄嗟に手を出すと、どこからともなくスズカが飛び込んできた。

「ちょっと、なにしてるの💦」


怒りと憎しみの入り雑じったクレインの視線はなんとも言えない。

レオンは嬉しそうにそれを迎え入れる。

「ふふ、冗談よ。」


「最低だな!この悪魔!!」

スズカを振り払い、レオンを突き飛ばしてクレインは行ってしまう。


「クレイン!なんてこと!」


言いながら、呼び戻そうとするスズカをレオンは止める。


「スズカ、いいのよ。これが、私たちの愛の形なんだから。」

(クレインの 怒りで震える瞳…恨みと憎しみの炎の揺めき…私はその中に身を燻らせ、溢れるほどの貴女を感じて燃えあがるわ💕)

レオンのいびつな恋は爆走中!



「💧愛っていうより、クレインは憎んでるように見えるわよ💦

※パラメールの一件で、あなたを恨んでいるみたい!助けてもらったっていうのに、なんなのかしらね!」

※人質であったクレインを奪還し、パラメリアンの本拠地を壊滅させた一件。


「  ……。」

(それまでは私の存在なんてスルーだったけど、今は強烈に感情をぶつける相手に変わった。)

「あの遠征は、私の外交の道を大きく広げてくれたわ。」


話ながら部屋を出るとレオンたちは通路を進んでステーションに向かう。


「ええ素晴らしすぎる功績よ!あの式典の時の 貴女の凛々しい姿、思い出すわ。」


ホールはザワザワと活気に溢れている。


「ふふ、私は飲みすぎて倒れて、オブジェと運命の出会いをした。」

レオンは当時を思い出して笑う。

その瞬間の表情には、ごく普通の女の子がいた。


「そう考えると、今のところ怪しい動きはないけど、やっぱりスプラには用心しなくちゃね。ムーヴ社との提携もあって、大っぴらに拒否れないけど。ユーリと並んで要注意人物だと思うわ!」

スズカたちが足を止め、見つめる方向には、ラディアたちと笑うスプラがいた。


「…危なっかしいものほど、懐に入れて監視するのが一番よ。

ねえ、そんなことより、何かいいものあった?しい先生の好物、高短団子は お土産に買っていかなきゃね❤️」

気づいて手を振るラディアたちに、天使の微笑みで応えるレオンだった。